PCを使わない企業はほとんど無い現在では、PCのスキルが重要視されています。PCスキルを客観的に証明できるものとして、MOS資格取得について前回の記事で解説しました。でもこのスキルはExcelやWordなどのソフトが使いこなせるかどうかの「PCスキル」です。PCそのものの仕組みなどを理解しているかという意味での「PCスキル」については含まれていません。
ITパスポート試験の合格を目指して勉強することは、PCの仕組みなどITの基礎知識を理解することに役立ちます。これから社会人となる学生や、いま社会で働いている社会人にも、ぜひ挑戦してもらいたい試験のひとつです。
ITパスポート試験とは
情報処理技術者試験は、経済産業大臣が実施する情報処理に関する国家試験です。
ITパスポート試験は、情報処理技術者試験の試験区分のひとつで、ITに関する基礎知識を問う試験です。IT業界に直接関わらなくても、ITの技術を使った商品やサービス、業務で必要となるシステムや仕事上とのやりとりなど、ビジネスだけでなく私生活にもITは大きく関係するようになっています。ITパスポートは、IT社会で働くうえで必要とされる「ITに関する基礎知識」を身につけているという証明になります。持っておいて絶対に損はない資格です。
情報処理技術者試験の区分
ITパスポート試験は、情報処理技術者試験のひとつですが、どの程度のレベルなのかを確認しておきましょう。情報処理技術者試験は、12の試験区分で構成され4段階にレベル付けされています。
その中で、ITパスポート試験は「ITを活用する者」のレベル1です。「情報処理技術者試験」のうち最も簡単な入門レベルの資格です。「職業人が共通に備えておくべき情報技術に関する基礎的な知識をもち、情報技術に携わる業務に就くか、担当業務に対して情報技術を活用していこうとする者」が対象ということです。
ITパスポートを取得するメリット
ITパスポートを取得するメリットはどのようなものがあるでしょうか。
国家試験なので信頼度が高い
ITパスポートは国家試験なので認知度や信頼度が高いといえます。
ITの基礎知識を持っている証明になるため、転職の際も有利になると思います。
また、取得後は資格更新手続きや講習を受けるなどの必要が無いので手間がかかりません。
ITの基本的な知識が身につく
ITパスポート試験の合格を目指して勉強することで、ITの幅広い知識が身につくのが最大のメリットと言ってもいいでしょう。
ITについての仕組みや基本的な知識などを学べるので、業務でのシステムやネットワークの扱い方・注意点などについて把握できます。システムについての基礎知識があることは重要です。
ビジネスに関する基礎知識を学べる
ITパスポート試験の出題範囲全体の約半分は、会社経営や情報管理、マネジメントなどのビジネスに関する問題が出題されます。そのため、ビジネスの基礎的な知識も同時に学ぶことができます。
取得を推奨している企業も
採用時のエントリーシートで、ITパスポートを取得しているかどうかを確認したり、社員教育や研修などに活用している企業もあるようです。
それは、ITの基礎知識不足から法令違反や情報漏洩などのリスクを生じさせてしまう可能性があるためです。そこで、リスク防止のためにITパスポートの取得を推奨しているというわけです。
取得者に優遇がある学校も
ITパスポート取得者に対して優遇する制度がある学校も多数あります。ITパスポートは難易度もさほど高くない試験なので、中高生であっても十分合格が狙えます。例えば次のような優遇内容です。
- 推薦入試などの際に優遇制度を採用している学校がある
- 単位取得認定の制度がある学校がある
- 学費の一部が免除される場合がある
就職で有利になる場合も
ITパスポートの資格を保有していれば、エントリーシートや履歴書などに資格保有を記載できます。ITの基礎知識が身についている証明になるため、就職が有利に進むことがあります。未経験者で資格を持っていない人と比べれば、基礎知識があることは大きな強みになります。
ITパスポート試験の合格率等
ITパスポート試験は、CBT方式により実施されています。
CBT（Computer Based Testing）方式とは、コンピュータを利用して実施する試験方式のことです。
ITパスポートが、国家試験として初めてCBT方式を導入された試験です。
なお、身体の不自由等によりコンピュータを用いる方式（CBT方式）で受験できない方は、春期（4月）と秋期（10月）の年2回、ペーパー方式によって受験することができます。
試験内容と合否判定について
ITパスポート試験Webサイトに掲載されている【試験内容】は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験時間 | 120分 |
| 出題数 | 小問：100問 ※ |
| 出題形式 | 四肢択一式 |
| 出題分野 | ストラテジ系（経営全般）：35問程度 マネジメント系（IT管理）：20問程度 テクノロジ系（IT技術） ：45問程度 |
| 合格基準 | 総合評価点600点以上であり、かつ分野別評価点もそれぞれ300点以上であること 総合評価点： 600点以上／1,000点（総合評価の満点） 分野別評価点： ストラテジ系 300点以上／1,000点（分野別評価の満点） マネジメント系 300点以上／1,000点（分野別評価の満点） テクノロジ系 300点以上／1,000点（分野別評価の満点） |
| 試験方式 | CBT（Computer Based Testing）方式 受験者はコンピュータに表示された試験問題に対して、 マウスやキーボードを用いて解答します。 |
| 採点方式 | IRT（Item Response Theory：項目応答理論）に基づいて 解答結果から評価点を算出します。 |
残りの8問は今後出題する問題を評価するために使われます。
ITパスポート試験に合格するには、総合評価は1000点満点中600点以上を合格基準を満たさなければなりません。さらに、分野別の評価点も各分野のすべてが基準点の300点以上を獲得しなければなりません。基準点を満たしていない場合、総合の評価点を満たしていても合格しないのです。偏りなく勉強を進めることが重要です。
試験合格率などの統計情報
ITパスポートの受験者数は年々が増加していますが、近年の合格率は毎年50%前後という状況です。合格率から見ると、数ある国家試験の中でも難易度はさほど高くないといえます。難易度には個人差がありますが、しっかりと計画的に勉強を進めれば合格は難しくないといえるでしょう。
リンク先の「公開情報」に詳しい「統計情報」が掲載されていますのでご確認ください。
ITパスポート試験の内容
ITパスポート試験合格を目指すには、試験要綱とシラバス（ITパスポート試験の出題範囲・出題内容）を確認しておく必要があります。
ITパスポート試験のシラバス
「シラバス」は、主催団体のIPAがホームページ上に「シラバスVer.6.0」が公開されています。
「試験要綱」は、情報処理技術者試験全体の要綱です。2023年3月の試験までは「試験要綱Ver.4.9」、2023年4月以降の試験では「試験要綱Ver.5.0」に変更されます。ITパスポート試験の変更部分は「試験の対象者像」が変更されますが、試験で問う知識・技能の範囲には変更がありません。
「シラバス」には、出題範囲の項目ごとに学習の目標や内容、「用語例」や「活用例」が示されています。下図は「ITパスポート試験シラバス」から「図1 シラバスの構成」を引用しました。
大分類と中分類の部分だけ次の項に掲載しておきます。
出題範囲
【ストラテジ系分野】
| 大分類 | 中分類 |
|---|---|
| 1 企業と法務 | 1 企業活動 2 法務 |
| 2 経営戦略 | 3 経営戦略マネジメント 4 技術戦略マネジメント 5 ビジネスインダストリ |
| 3 システム戦略 | 6 システム戦略 7 システム企画 |
【マネジメント系分野】
| 大分類 | 中分類 |
|---|---|
| 4 開発技術 | 8 システム開発技術 9 ソフトウェア開発管理技術 |
| 5 プロジェクトマネジメント | 10 プロジェクトマネジメント |
| 6 サービスマネジメント | 11 サービスマネジメント 12 システム監査 |
【テクノロジ系分野】
| 大分類 | 中分類 |
|---|---|
| 7 基礎理論 | 13 基礎理論 14 アルゴリズムとプログラミング |
| 8 コンピュータシステム | 15 コンピュータ構成要素 16 システム構成要素 17 ソフトウェア 18 ハードウェア |
| 9 技術要素 | 19 ヒューマンインタフェース 20 マルチメディア 21 データベース 22 ネットワーク 23 セキュリティ |
中分類以下の項目詳細部分については、IPAがホームページから「シラバス」を確認してください。
ITパスポート試験合格を目指すには
合格を目指すには、しっかりと試験対策をする必要があります。対策方法は大きく分けて「独学」か「通信・通学講座」などになるでしょう。どのように勉強していくのか計画を立てましょう。
先ずは、過去問題などで自分がどの程度の実力なのかを確認して判断するのが良いと思います。
過去問題・解答例
IPAホームページから「過去問題」と「解答例」をPDF形式でダウンロードできます。
「情報公開」メニューの「過去問題」にアクセスすればダウンロードできます。
過去問題を確認することで、試験内容がどんなものなのかが確認できるのはもちろんですが、内容を見れば、自分が理解できない部分を確認することができます。確認することで、合格に向けて何を勉強していけばいいのかを把握することができます。
CBT疑似体験ソフトウェア
IPAホームページには「CBT疑似体験ソフトウェア」も提供されています。
トップページ左のバナーまたは「受験案内」メニューの「CBT疑似体験ソフトウェア」にアクセスして利用できます。体験したいソフトウェア（ZIPファイル）をダウンロードして実行すれば、過去問題を疑似体験することができます。
CBTの試験会場で操作する受験画面を体験できる疑似体験用ソフトウェアです。
・平成24年度春期分以降の公開問題を体験することができます。
・ソフトウェアは登録問題の公開時期毎に分かれており、全問（100問）登録されています。
・試験結果画面では、実際に解答した各問題の正誤や正答数が表示されます。
残念ながら解答の解説まではしてくれないので、参考書などで自ら確認する必要があります。
でも、調べることが勉強になりますから、そのほうが良いのかもしれませんね。
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ITパスポートの通学・通信講座
合格したい期日までに時間の無い方や、独学が苦手な方は「通信講座」などで勉強する方法もあります。ネットで「ITパスポート 通信講座」などで検索すればたくさんヒットすると思います。
ITパスポート通信講座等を選ぶ際は次のような項目を比較ポイントとして判断しましょう。
・料金の比較（金額だけを見るのではなく内容の充実度も考慮して比較しましょう）
・講義の比較（講義の受講スタイルや自分に合うスケジュールや融通性など）
・教材の比較（シラバスに沿ったものか、わかりやすさ、復習などがやりやすいか）
・サポート体制や信頼性など（口コミや評価なども参考にしながら判断しましょう）
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まとめ（おわりに）
以上、「ITパスポート」についての記事を書いてみました。
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「ITパスポート」がどういうものなのかがよくわかりました。
ITパスポート試験の合格を目指すことで、ITの基礎知識だけでなくビジネスの基礎的な知識も同時に学ぶことができることもわかりました。自分のスキルがどの程度なのかを知る意味でも早速試験合格を目指して勉強を始めてみようと思います。
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